嫌な記憶を消してもらえますか

このページは、公認心理師・ヒプノセラピストの紫紋かつ恵が回答しています。

結論:記憶を消すことはできません。ただ、その記憶に結びついた苦しさをやわらげることはできます。「思い出せるけれど、もう痛くない」という状態を目指します。

なぜ消せないのか

記憶を選んで削除する技術は、催眠にはありません。そういうものがあるかのように言うのは、誠実ではないと思います。

そしてもうひとつ、仮に消せたとしても、それは望ましいことではありません。

つらい記憶は、その方が生きてこられた道のりの一部です。そこから学んだこと、身につけた優しさ、人の痛みが分かる感覚。それらは同じ場所から生まれています。記憶だけを抜き取れば、そこも一緒に失われてしまいます。

では何ができるのか

苦しいのは記憶そのものではなく、そこに貼りついたままの感情です。

多くの場合、その出来事があったときには、感じている余裕がありませんでした。悲しむ間もなく次のことに対処しなければならなかった。怒ってはいけない立場だった。だから感情だけが未処理のまま残り、今も反応し続けています。

セッションでは、その置き去りにされた感情に、今のご自身が向き合います。感じ切ることができると、感情は自然に収まっていきます。

その結果として起こるのが、次のような変化です。

  • 思い出しても、以前のように胸が締めつけられない
  • ふとした瞬間に、あの場面が浮かんでこなくなる
  • 出来事として振り返れるようになる
  • 当時の自分を、責めずに見られるようになる

記憶は残ります。ただ、それが今の自分を支配しなくなる。それがヒプノセラピーにできることです。

「忘れたい」というお気持ちについて

消してほしいとおっしゃる方は、それだけ長く苦しんでこられたのだと思います。そのお気持ちを否定するつもりはありません。

ただ、実際にセッションを終えられた方から「消したいとは思わなくなりました」というお声をいただくことがあります。苦しさが薄れると、記憶そのものは残っていて構わない、と感じられるようになるのです。

消すことを目指すのではなく、痛みを手放すことを目指す。そのほうが、結果として楽になられる方が多いように思います。

ご注意いただきたいこと

もし「記憶を消せます」と謳っているところがあれば、慎重になさってください。

できないことをできると言うのは、その時点で信頼に足りません。苦しんでいる方ほど、そうした言葉に希望を持ってしまいます。

当サロンでは、できることとできないことを、はじめに申し上げるようにしています。

つらい体験の扱い方についてはトラウマやつらい体験にも対応できますかを、期待できる変化についてはどのような変化が期待できますかをご覧ください。

※ヒプノセラピーは医療行為ではなく、医療の代替となるものではありません。治療を目的とされる場合は、医療機関にご相談ください。